お薬を飲んでいる方へ。健康食品を始める前に確かめておきたいこと

気温が下がって体調を意識する季節になると、食事に何かを足してみようかと考える方が増えます。そのとき、処方薬や市販薬を日常的に飲んでいる方からよく出てくるのが、「一緒にとっても差し支えないのだろうか」という疑問です。これは慎重な方だけの心配ではなく、公的機関がくり返し注意を呼びかけてきた論点でもあります。健康食品と薬の関係について、国の資料で示されている考え方を整理してみます。
「食品だから安全」とは言い切れない
食品安全委員会は2015年12月に「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」を公表しています。その冒頭に置かれているのが、「食品」だから安全とは限らない、という一文です。たくさんとれば効率がよいという発想も、同じように退けられています。理由として挙げられているのは、おおむね次のような点です。
- 錠剤やカプセルの形は、特定の成分だけを一度に多くとりやすい
- ビタミンやミネラルには、とりすぎを避けるための上限の目安が定められているものがある
- 食べてきた歴史が浅い素材は、無理のない量が分かっていないものも少なくない
- 医薬品と同じ水準の品質管理が制度として義務づけられているわけではない
健康食品を否定する話ではありません。普段の食事と同じように量を見ておく構えが必要だ、ということです。
影響の出方には「弱まる」と「強まる」がある
薬と食品の成分が重なったときの影響は、大きく二つの方向に分かれます。薬と似た向きに働くものが重なれば作用は強く出やすく、逆の向きに働くものが重なれば効き方は弱まりやすい。さらに、吸収される速さや肝臓で分解される速さが変わることで、血液中の薬の量そのものが上下することもあります。
大事なのは、「この食品が体に悪い」という単純な話ではない点です。どちらも単独では問題にならないのに、重ね方によって想定とずれが生じる。だからこそ、一度確かめる価値があります。
26年前から注意が呼びかけられている素材もある
古い例では、2000年5月に厚生労働省が、セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)を含む食品について注意喚起を出しました。この素材が肝臓の薬物代謝酵素のはたらきを高めるため、一部の薬の血液中の濃度が下がり、本来期待されている効き方にならないおそれがあるという内容でした。対象として挙げられていたのは、血液を固まりにくくする薬、免疫の働きを抑える薬、気管支を広げる薬、心臓の薬、経口避妊薬など、量の管理が重要な薬でした。
ひとつの素材をめぐる注意ですが、読み取れることは広いところにあります。植物由来であることや食品として売られていることは、薬との関係が検討済みであることを意味しません。
相談するときは、製品の表示ごと見せる
消費者庁は一般の方向けの案内で、自己判断で医薬品と併せてとることは避け、製品に書かれた摂取目安量と注意事項を守るよう呼びかけています。体調に変化を感じたときも、専門家への相談がすすめられています。
相談を実りあるものにする工夫もあります。
- おくすり手帳と、健康食品のパッケージや表示そのものを一緒に持っていく。商品名だけでは原材料や量が伝わらない
- 「始めたい」ときだけでなく、「やめた」ときも伝える。やめたことで薬の効き方が変わる場合もある
- 複数の製品を併用しているなら、その全部を伝える。成分が重複していることは珍しくない
なお、先の注意喚起でも、不安になって自己判断で薬をやめることには慎重であるよう促されていました。順番としては、やめるかどうかではなく、まず相談する、です。
自分で調べたいときの入口
素材ごとの安全性は、公的な情報源で調べられます。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報は、素材名から報告を探せるデータベースです。厚労省のeJIM(「統合医療」情報発信サイト)でも、情報の見極め方が一般向けに解説されています。宣伝の文章より先にこうした場所を開く習慣が、役に立ちます。
まとめ
健康食品と薬の関係は、善悪ではなく組み合わせの問題です。食品の形をしていても量の見当は必要で、重なり方によって薬の効き方が変わることがある。判断材料を一番多く持っているのは、いつもの薬を把握している医師や薬剤師です。新しく何かを始める前に一言添えておく。それだけで、安心して続けられる範囲がはっきりします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の商品の効果効能を示すものではありません。体調に不安のある方は、医師・薬剤師にご相談ください。

